今日はこれ聴いた。

聴いた音楽について書くブログ。

aiko『どうしたって伝えられないから』

どうしたって伝えられないから

2021年3月リリースのフルアルバム。

13曲1時間超えのボリュームで全部恋愛の曲と、聞くだけで胃もたれしそう(aikoのアルバムではいつものこと)ですが、それぞれの曲から感じる気持ちの強さもヘヴィー級(これもいつものことと言えばいつものこと)。

 

元々aikoを聴き始めた理由が「百合(平たく言えば創作物における女の子同士の関係のこと)を考える参考になりそうだから」というところからも推して量れるように、aikoの書く歌詞に自分が感情移入をすることはまずないんですが、それでもaikoの歌詞は結構好き。これはなんでだろうと考えた時に思ったのは「言葉が自然」ということでした。

大袈裟でもなく陳腐でもなく、生活と同じ水準にある言葉で綴られる歌詞だから、感情移入ができなくても、歌詞の主人公やその気持ちにリアリティを感じられるのだろうと思います。

 

本作でもそれは感じられて、特に好きなのは「青空」の《ちょっと唇に力入れて/何にでも頷いてって今思い返すと馬鹿みたいだな》。「ちょっと唇に力入れて」に込められたニュアンスを想像するのが楽しいです。

あとはやっぱり、「青空」をタイトルに冠して、その曲の〆が《本当は涙で見えないただの空》なのが良いですね。ドラマチックにしすぎないことで歌詞としてのカタルシスを生んでいるなあと。

 

13曲連続で見せつけられる人を想う気持ちの強さ・重さは冒頭で書いたように胃もたれしそうになるんですが、それをいろいろな曲調で聴かせてくれるので、音楽として飽きずに聴けるのもいいところです(これもaiko的にはわりといつものこと)。「磁石」のギターのフレーズが耳に残る。

冷えた怒りと思い出を捨てて前を向く1曲目の「ばいばーーい」から《辛い時にはあたしを見てね》と想い人に臆面もなく言える愛に溢れた13曲目の「いつもいる」まで、自分の気持ちに振り回されながら強く生きている人たちがその向こうに浮かんでくるアルバム。

いつものaikoですが安心のaikoとも言える。