名刺代わりの④GRAPEVINE『真昼のストレンジランド』
この企画でこのバンドのアルバムを選んでいいのか正直とても悩んだので、悩んだ!ということを記録するためにこうして書いています。GRAPEVINEです。
④GRAPEVINE『真昼のストレンジランド』
GRAPEVINEというバンドを「自分にとってはこういうバンドです」と一言で説明しようとすると『はやくないバンド』になります。
BPMがはやくないのもそうだし、一度聴けば口ずさめるようなメロディじゃないし、歌詞をパッと読んでも意味がわからないし……。好んで聴くようになるまでに時間のかかったバンドの一つなので、誰かに紹介するにあたっても、自分の体験的にも、GRAPEVINEは『はやくない』。こうやって書くと巷で噂の「ファスト教養」と正反対みたいなバンドに見えてきますね。
さておき。無理やり一言でまとめてみましたが未だに俺はGRAPEVINEのことを掴みきれていません。技術がすげえとか、フレーズがめちゃめちゃキャッチーとか、そういう語り方をこのバンドではできない(そこが本質ではないと思っているという意味です)ので文章にしようとするととても困る。なのに自分の好きなアルバムにGRAPEVINEの作品を挙げていいのかな〜というのが先に述べた悩みです。好きだしいっか〜と思ったので結局挙げてるんですが。
ここまで書いてみて、そもそも自分がGRAPEVINEのどこが好きなのか書いてないことに気がつきました。この『真昼のストレンジランド』を選んだ理由とも関わってくるんですが、「音や言葉に情景が宿っている」ように感じられるのが、GRAPEVINEのすごく好きなところです。特にこのアルバムから感じられるのは夏と異郷の遠い風景。訪れたこともないのに、夏の日差しが降り注ぐ
このバンドのことを語ろうとしても、気づけば自分とこのバンドしかいなくなる。人に伝わる語彙に直すには音楽的な話を持ち出すしかないんですが、自分の音楽的な語彙ではGRAPEVINEを語れない……。自分の中にはGRAPEVINEの曲を聴くことで湧き上がる確かな感覚があるんですが、それを客観的に語るための解像度が足りない、というのが「掴みきれていない」という感覚なわけです。
だから、
でかい当たりを掴んでしまった
世界を変えてしまうかもしれない
(真昼の子供たち)
の「でかい当たり」がなんなのかを自分なりに言葉にできた時、俺はこのアルバムを真に理解できたと言えるのかもしれません。今はその道の途中にいるのだという、これはそういうログです。