今日はこれ聴いた。

聴いた音楽について書くブログ。

日食なつこ『アンチ・フリーズ』

アンチ・フリーズ


2021年8月リリースのフルアルバム。

日食なつこを知ったのは今年のUNISON SQUARE GARDENの自主企画イベントでした。サブスクで「水流のロック」「エピゴウネ」をまず聴き、熱いマインドの歌詞を書く人だなと感じて今年リリースされた本作を聴いてハマる、という流れ。

作詞作曲の日食なつこ本人はピアノと歌を担当し、あとは曲のアレンジに応じていろんな楽器が入ってくるというスタイルの13曲。何よりその歌声が格好良くて痺れる。演出しようとしたものではなく、自然と滲み出てくるような格好良さを感じています。また、メインであるピアノだけでなくドラムやホーンなど周りの楽器にも存在感があり、華やかさと力強さが兼ね備わっている。普段聴くのがロックバンドばかりの自分も聴きやすいアルバムでした。

冒頭の三曲がBPMも速めでロック然としてキャッチー。初めはそこばかり聴いていたんですが、四曲目である「百万里」から先の、歌の伸びやかさと懐の深い音楽性こそがもしかしたらこのアルバムの本当の魅力なのかもしれません。燃えるゴミを片付ける最中で現在の自分の在り方にふと気づく、生活に根ざした「KANENNGOMI」のような曲があれば、厭世的な世界観で夢見心地な雰囲気の「泡沫の箱庭」もある。また「ワールドマーチ」のサビの《もういいからさ この世で一番 高い塔の上に2人で立って/世界の全てを見下そうよ/それが許されるくらい 君はもう生きた》というラインは百合オタク的に外せません(突然出てくる百合オタク)。

 

そして出会いが出会いなだけにUNISON SQUARE GARDENと並べて考えてしまうんですが、リスナーや音楽との距離感に近しいものを感じていて、そういうところも好きです。数え歌をモチーフに音楽のことを歌った「音楽のすゝめ」(《六つ、あんまり大事にしまい込まないこと/空に放り投げてみたっていいんだぜ》)や、立ち行かない現状にも勇気をもらえる「四十路」(《しゃがみ込むことを禁ずる/俺からの命令はそれだけさ》)など、音楽やリスナーに対してある一定の距離をおきながらも、視界から外すことは絶対にないような態度が似ているなぁと思います。日食なつこの方がキッパリと言い切るところはあるけど、音楽性も相まって押し付けがましくなく気持ちが良い。

 

最近は好きなアーティストを繰り返し聴くばかりで、新しいアーティストを聴くにも腰を入れないとままならなくなってきたなあと感じているのですが、今年もこうやってはじめましての音楽を知って好きになれたのは幸せなことだなと思います。

 

アンチ・フリーズ

アンチ・フリーズ

  • 日食なつこ
  • J-Pop
  • ¥2444