今日はこれ聴いた。

聴いた音楽について書くブログ。

Base Ball Bear『DIARY KEY』

 

 

 

DIARY KEY



2021年10月リリースのフルアルバム。

Base Ball Bearとは「もちろん知ってるし好きな曲は好きだけど熱心に追いかけてきたわけじゃない」という距離感が何年も続いてきたのですが、去年の『C3』でわりとがっつりハマって普段から聴くようになりました。そういうこともあり、アルバムという単位では『二十九歳』以降の作品しかほとんど聴いていないため、過去のアルバムと比較しながら聴くことがあまりできないのは惜しい気もしますが、それはさておき。

 

「すごく誠実にギターロックをしている」というのがアルバムの第一印象でした。どっしりとしたドラムとベースの上にざくざくとリズムを刻むギターが鳴って、そこに歌がある、というオーソドックスなバンドのスタイル……と書くとなんかすごく地味そうに見えるし、言葉だけで記そうとすると「どのバンドも普通はだいたいできることでは?」と思ってしまうんですが……そういう「普通」を高水準で繰り出してきているのが本作である気がします。これはもしかしたら自分が大袈裟なモノや仕掛けがはっきり分かる派手なモノに慣れすぎたが故の感覚なのかもしれませんが(余談ですがアニソン・ボカロ由来の音楽にはそういう側面が強いように感じています)。

その「普通さ」は歌詞においても考えられそうです。極端なシチュエーションや強烈な言葉はほとんど用いられておらず、分解すれば「普通の言葉」の組み合わせなのに、そこには確かなオリジナリティがある。例えば「_touch」の《どうでもよくなり病が今夜も疼きだす》のようなワンフレーズにおいてもそうだし、ラストを飾る「ドライブ」は一人称を使わずに、誰かの生活と、そこにある小さな気付きや喜びをありのままに描いている。

そして注目したいのがその描き方。昨今は(その良し悪しはさておき)作品の中で一から百まで説明することが求められがちだと感じていますが、本作では描かれている気持ちを考え想像できる余地や行間が用意されています。それはリスナーに対する挑戦であり、これ以上ない信頼であるのかもしれません。

 

それにしても、ラッパーをゲストに迎えたり、ベースの関根さんがメインボーカルの曲を挟んだりと、曲ごとのカラーはそれぞれにちゃんと設けたうえで、アルバムとしてひとつの色にまとめ上げているのがすごい。「ベボベと言ったらこんな感じ」と言えそうな、ストレートな曲調の「SYUUU」にも瑞々しさと同時に余裕が垣間見えて、もはやバンドとしてベテランの域に達しつつあることを感じさせます。次はどんな曲を聴かせてくれるのだろうと今から楽しみです。